「ボクはやっと認知症のことがわかった」感想文

認知症の権威として医療や介護の世界ではおそらく知らない人はいないであろう長谷川和夫先生。

認知症のスクリーニングに使われる長谷川式スケールの作成者である。

その長谷川先生が認知症になったと公表したのが2018年。

その後にかかれたのが、この「ボクはやっと認知症のことがわかった」という本である。


長年、認知症を研究し診療に携わってきた医師と言う立場と、認知症になった当事者としての立場から書かれているこの本。

認知症を知るうえで欠かせない1冊となっている。


第1章と第3章では、認知症当事者としての視点が満載で、介護職として非常に勉強になったし、反省すべき点も多かった。

第2、4、5章では、長谷川先生が長年携わってきた「認知症」について、そして長谷川式スケールについて、詳しく解説してある。先生の人間味があふれていて、認知症の本にありがちな堅苦しさもなく、非常に読みやすく理解しやすい。

第6章では、認知症と社会、医療について、先生の体験や考えが盛り込まれている。医師と当事者の両方の視点から車の運転が危険と言うことに述べられていて、この辺りをもっとテレビなどでも報道してもよいのではないかと思った。

第7章は、先生の想いが詰まっていて、非常に心つかまれるものがあった。

医師や専門職が書いた本は、自叙伝でも少々固く読みにくいということは往々にある。しかし、この本はとても読みやすかった。ところどころ、注釈というか解説というか、背景的なことが書いてあることもあり、全体的に理解しやすかった。

今後の日本において、認知症については国民全体が考えていかなければならない課題の一つである。マイナスイメージも多い認知症については、介護職として実際に認知症の人と携わっている私ですら、その一部分しか知らないな、と思い知らされた一冊であった。

非常に読みやすい本なので、ぜひ多くの方にこの本を読んでいただき、認知症のことを少しでも正しく知ってもらえたらいいなと思う。




介護専門ライティング事務所「楓和堂」

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